【憧れの入り口】

バスケをする子供にとって、向上心がメラメラ沸き立つ瞬間は、憧れを見つけた時だったりします。 今回は、一保護者としての、娘の小学生時代のエピソードです。こんな憧れ方法で、気持ちが強くなることもあるんやなぁ…という話です。

 

小学校2年から始めたミニバスケ…
上級生が少なく、4年生の時には何もできなくても試合に出なければならないチーム状況。。。つまり、憧れの対象としたい上級生自体がいない環境でした。

もちろん、4年生の頃は、どの大会に出ても100点前後取られての大敗少なくなく…。。
そして、それだけではなく、チームメイトが4名しかいなくなった時には、練習時間になるまで、自分達でポスターやプラカードを作って、学校中で部員募集するなど、自らの仲間集めが最大の仕事だったという状況でした。
でも、試合にどんなに負けても「少しずつ集まる仲間と、長く一緒にバスケがしたい。卒業するまでやり抜きたい。そのためには強くなりたい。」という意識は、どんどん強くなります。自分達で仲間集めをした経験が、財産になりつつあります。
 
5年生の頃になると、少しずつ勝てる試合も増えてきますが、やはり強豪チームにはどうしても歯が立たない。でも、大して練習をしていない上級生チームには、勝てるようになる。
すると、貪欲さが増して、「強豪チーム同士の試合をたくさん見たい!」と言い始めました。
強豪他チームには、どこも数人のスーパープレイヤーがいたりします。
 
・どんなに狭い場所でも、果敢に相手を割ってドライブでシュートを決める子
・ロールターンや、ステップフェイントで華麗にシュートを決める子
・物凄い迫力のディフェンスで、プレッシャーを与える子
・どんだけ遠いところから入れるねん?!という驚きのシューター
・ゴール下でどれだけプレッシャーを受けても力強いワンハンドシュートを決める女子
・残り時間を計算しながら攻める頭脳的試合運びの子 etc…
 
コート内の派手でも地味でも、子供の心を動かすプレーは憧れであり、そこに「自分もいつか、あんなプレイヤーになりたいっ!!」…と、早速翌日の練習から、真似事からでもやってみようという意欲が出れば、しめしめですね。。。
 
…っと!ここまでは普通の話。

 

心豊かな人間形成を重んじる親としては、他チームの優秀選手について、とても嬉しい部分を憧れてくれたことがありました。


それは…
 
娘が5年生の時、夏の大阪府大会・決勝トーナメント最終日、男女ともに準決勝・決勝の試合が行われた時のことです。
娘達は早々に敗退していましたので、単なる勉強観戦です。
「府大会の準決勝まで勝ちあがる4チームをどうしても見たい」というので、連れて行きました。いつものように「いつか私もあんなプレーができるようになりたい」という発見と勉強のために、試合会場に足を運んだのです。
 
男子も女子も、さすがに大阪ベスト4以上のチームは、大人顔負けのプレーばかり… 。技術もハートの強さも、レベルが格段と上なので、付き添いの僕のほうが圧倒されっぱなし。
でも、横に目をやると、興奮を抑えながらもしっかり目に焼き付けようとする娘の真剣な眼差しは、ギラギラです。
 
試合を堪能し、帰路車中での会話でのこと。
この日の観戦には、娘のチームメイトの一人を誘ってきていましたが、それぞれ二人に「どのチームのどのプレーが一番感動した?」と聞いてみました。
  
すると、二人とも同じことを言うんです。
 
「父ちゃんが一々感動していた凄いプレーは、最上級生となる来年の今頃は、私ら絶対できると思うねん。いや、必ずできるようにならなアカン!せやないと、全国なんか行かれへん…。それよりも一番感動したのは、表彰式や!」
 
なんじゃそりゃ?…ま、トロフィーなんて手にしたこと無いもんなぁ…。
そもそも府大会、市大会だけでなく、地元の小さなカップ戦でも勝てへんやんか…(^^;)…やはり…やっぱりあの輝かしいモノが欲しいのか…、案外、名誉欲かよ?…とツッコミを入れようとした矢先のこと…。
 
娘とチームメイトが口を揃えて「今日の女子で2位のチームみたいになりたい!」と言います。
 
へ?なんで?なんで2位なん?
…と思いがちですが、会場にいた僕にはピンときました。
 
まず、男子1位~4位の表彰が終わり、女子1位表彰の後、女子2位の順番。
表彰状、トロフィーを渡された時の「ありがとうございます!」の声が、男子のどのチームよりも大きく、その立派な姿は、会場中の全ての人の心に響き、自然と大きな拍手を送っていました。
そして、授与する代表者がお辞儀をする時、後ろに並んでいた全選手も一斉にお辞儀をします。
 
この光景を、植えつけられた軍隊形式とみるか、規律正しいとみるかの議論は別にして、少なくとも娘とチームメイトは一気に感動し、そのチームの関係者でもないのに、思わず大歓声で拍手を送っていました。
 
そう…つまりは…男女合わせて表彰8チームの中で、確かに一番カッコよかった。
 
娘とチームメイトは口を揃えて言います。
「このチームが大阪NO.1や!うちらは、こんなチームになろうな!」
 
表彰式を終え、コートから出る時に、このチームだけがするコート内に向かっての「今日は一日ありがとうございました!」の整列挨拶も見て、余計に娘達は大興奮。
 
この日(5年生の7月)を境に、娘とチームメイトは、練習中の態度、挨拶、振る舞い、後輩への気配りが180度変わりました。
別に偽善者でも優等生ぶるというとかそういうのではなく、ただ単に「それが正しい」と感じるからこそ、毎日それを続けるようになります。
すると…不思議なもので、チームメイトもその態度に追随します。
 
6年生になり、一緒に観戦したチームメイトの子と娘は、特にキャプテン、副キャプテンではありませんでした。
したがって、6年生になってやっと強くなり、各種大会で優勝が続いても、表彰授与される機会は娘にはありません。
 
72チームトーナメントの市大会…ここで夏の大会ではチーム史上女子初優勝をした時は、チーム全員で大きな挨拶ができました。
ただし、娘と前の年一緒に感動を味わったチームメイトは、表彰状やトロフィーを授与される立場ではありませんでした。
  
ところが、10月の体育の日に行われた「大阪市3on3大会」に出場した時に、チャンスが訪れます。
 
チーム別けでは、娘とそのチームメイトの子が同じチームになり、約40チームエントリーの中で、歓喜の優勝(この大会でも、チーム史上初優勝)
キャプテンと副キャプテンのチームは準々決勝で敗退しているため、この時ばかりは、娘とそのチームメイトに直接授与されます。
 
男子表彰で、小学生の部、中学生の部、高校生の部、成年の部の表彰が終って、いよいよ女子の表彰。
最初に小学生の部が前に呼ばれます。
 
表彰状と金メダルを授与されると、大阪中央体育館という大アリーナでも、隅々に行き渡る大きな声で「ありがとうございます!」
…自然と、この日一番大きな拍手をもらいます。
一年前、他チームキャプテンの表彰授与をLIVEで見て感動していた二人の声なので、とても立派でした。
 
特に、既に表彰されていた成年男子チームから「大人の方がチャラケていて、挨拶できてへん。オレ達のほうがアカンやん!」と周りの笑いを誘う大絶賛の拍手をくれたのは、大阪らしいところでしょうか…。
 
帯同審判を務めていた娘の学校教諭も、大会役員に「良い挨拶ができる子達ですね」と囁かれ、帯同審判だった先生も嬉しそうに微笑んでおられましたね。
 
その後娘は、卒業間際にエントリーされた大阪市選抜選手大会で、優秀選手賞を受賞させていただきます。その受賞内容のことよりも、その表彰式で、表彰選手一人ひとりにメダルを授与される際、男女合わせて、一番大きな声での「ありがとうございます!」でしたので、これは親としても、受賞以上に嬉しいことでした。
その時の挨拶がしっかりできていなければ、親としては受賞の嬉しさは半減以下です。
 
気持ちを強く、人に優しく、周りへの感謝の気持ちを忘れない。
これを学ぶためにバスケをしている。
手前味噌な話しを続けていますが、僕はこれを忘れていないことが、凄く嬉しかった…。


一方で…

どれだけ良い戦績を残しても、人としての振る舞いが残念であれば、その戦績の価値も下がってしまう。 極論を言うと、インターハイ出場経験者のある男の子が、人としてとても残念な言動をしていることを目の当たりにすることもあったりします。


娘がバスケを続けている原点の一つに、5年生の時に見た他チームの立派な振る舞い…それに気付く感受性があります。
日々の基礎トレーニング、チームプレー、自主練習など、様々なことを乗り越え、身につけていくわけですが、とても大切にして欲しいのは感受性も磨くこと。

磨かれた感受性から生まれる「振る舞い」はまた、次世代にも繋がっていく。 それが「文化」かもしれません。
文化は、教えられてやるだけではなく、本質の継承なのかもしれません。
 
努力してもなかなかできない技はあっても、今日からできることがある。
挨拶・感謝の気持ち・気配り…。
バスケを通じて学んで欲しいとても大切な要素だと思います。
そう、どのチームでも今日から「挨拶日本一のチーム」から始められるのです。(今日だけ行っても意味はありませんが…)
 
こうした話を、娘を引き合いに出して述べるのは、かなり図太い神経とは思います(笑。
でも、彼女達が感じた「しっかりと感謝の気持ちを伝える挨拶の声」は、親として胸を張っても良いのかなと思いますし、何よりも、そうした子がどんどん増えることを願って述べてみました。
  
もちろん、娘に関しては美談だけではなく、今でもまだまだ弱い部分がたくさんあります。
身の丈以上のレベルのバスケ環境で、娘は想像以上の試練の日々というのも実態です。


いずれにしても、多くの子供達が、五感を研ぎ澄まし、色んな角度で「憧れ」を探し続けて欲しいです。

憧れの入口は、色んな所にあるのです。
それが「プレー」であっても「振る舞い」であっても構わない。
そして、その入口に足を踏み入れたら、迷わず憧れに向かって前進するのみ!
好きこそものの上手なれ!

 

 

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