それは、まだ小学2年生の時。
彼女がバスケを始めることになったキッカケ…この日に起きたミラクル。
感動巨編…?
2005年11月20日…国内プロバスケbjリーグが発足したこの年の“大阪EVESSA”ホームゲームの第4戦を観戦。
仕事仲間や遊び仲間大勢と共に家族3人名で、アリーナ席最後尾で観た。
ここで起きた試合前と試合直後の2つのエピソード。
<2005年11月21日にmixiに綴っていたテキストを転記>
試合前のセレモニーで、出場選手紹介でコートに現れたエベッサの選手たちが、来場者へのファンサービスとして、客席に向かってバスケのボールを何球か投げ込む。
アリーナ最後尾も、思いっきり勢いよく投げ込んでくれれば、届かない距離ではない。
ちょと無駄かもしれないが、隣にいた娘を抱え上げ、娘にも大きく手を振らせて「こっちへ投げて!」とアピールさせてみた。
…すると!
城宝選手(当時エベッサに所属:以下敬称略)が、ボクら親子に気付いてくれた。
城宝は、ちょうどボクらの席の真正面に居たしね。
アリーナ席とはいえ、段差がついており、最後列は目立つし、周りに他に子供連れもなく、まだ試合開始前で観客も少ない。
「ファンサービスは子供から」という基本どおり…確実に父親に掲げ上げられた少女に気付いてくれた。
力いっぱいのループパスで投げ込むイケメン城宝からのボール。
が…しかし!
我々父娘の前列席の男性がキャッチ…。
キャッチした男性友人達の盛り上がりとは裏腹に、ありゃ~!!と後列席では、ボクら親子の沈む声。
…と、その20代前半と思われる男性、自分がボールキャッチできた事を喜ぶと同時に、直ぐ後ろにいた少女に気付き、すごくバツ悪そうにしていた。
娘は、羨ましさと悔しさを含ませた苦笑いで、その男性に微笑み返し。
ボクの隣にいた沢山の遊び仲間も「彼(城宝選手)は、確実にこの女の子に投げてくれてたよな~」なんてワザと聞こえるように援護射撃。
たまらずその男性も「え~っと…、このボール、良かったら…あ、あげよう…か…?」と娘に向かって苦笑い。
しかし、「えへへ…。い、いえ、イイです…。」と消えるような声で、娘は遠慮した。
小学2年生…そんなもんやね…。
その後、ボールを獲得した男性は、同じグループの女性にプレゼントしようとしていたのか、友人達にボールを廻して見せていた。
その様子も含め、後ろからそのボールをよ~く見ると、オフィシャル球のバスケットボールに、マジックで、エベッサ全選手の直筆サインが描かれている。
しばらくして、娘は、先ほどの男性の「良かったら、あげようか?」のお言葉に甘えてみたくなったようだ。
たまたまその前の週末、御堂筋の歩行者天国で行われたエベッサのイベント参加していた娘は、既にエベッサ選手のファンとなっていたこともある。
バスケを観たことがないのに、街の中でのボールを使った遊びイベントだけで、選手と一緒に遊べただけで、子どもというのはファンにになってしまうらしい。
その娘が…
第一Q終了後、おもむろにツカツカツカ…と、前列の男性席の前に近づいていったと思うと…
「あの~…。すみません…。先ほどのボール、やっぱり良かったら、私にくれませんか?」
彼女にしては、相当な勇気だと思う。
この際、「図々しい」とは言わないよ。
いや、めちゃくちゃ「調子のいい話」な言動なんだけれど…そこまでの自発的な行動は「好意に甘える勇気」と言おう!
さっき、一度はご好意に遠慮してたやんけ…なんてツッコミ返しはせんとこ…。
たった数分の間とは言え、8歳にしては、相当な迷いと決心だったと思う。
「え!?やっぱり…ほ、ほしい…?…どうしても…欲しいの?」と戸惑う男性。
今度は間髪入れずに「はい!」と回答した娘。
で、結局、その男性は後ろ髪を引かれる思いながら、娘にボールをプレゼントしてくれた!
めちゃ、ナイスガイや…。カッコええぞ!
その潔さに、一度はその男性にプレゼントされていた女性も、目がハートになってその男性を見つめているやん…。
(女性のほうは、それほどそのボールにも興味を示していなかったかもよ…)
だから、貴方も失うものより得るものの方が大きかったのかもよ!
(いやね?コレも、こちらが一方的に気分エエから、勝手な想像しただけやけど…)
もちろん、ボクの周りの仲間たちもその一部始終を見ており、拍手喝さい…その一角が少し盛り上がる。
すぐにボクも男性に握手を求め、「父として深く感謝します」と礼を伝えた。
男性も「いえ、ボールを取ってしまった…という感じで、何か罪悪感もあったので…」と謙遜してくれた。
いやいや、めちゃくちゃ感謝だよ。
エエ人だよ。
隣の彼女…あんたはエエ人とお付き合いしてるよ…いや、付き合ってるんかどうか知らんけど…
このサインボールは、娘にとってプライスレスな宝物。
これは部屋で一番目立つところに飾ってある。
でも、これは試合後のエピソードに続く伏線に過ぎなかった。
前半大量リードされていたエベッサ。
第3Qに怒涛の反撃で逆転し、ダイナミックなアリウープにも魅せられるなど、会場の盛り上がりは最高潮!
ボクらは、スタンディングオベーションで試合終了!
もちろん、バスケ初観戦の娘も、ずっと立ち続けてのエベッサ応援が実を結び、大喜び♪
おやおや?
選手ベンチ裏には、試合直後からファンが群がる。
どうやら、選手にサインを求める老若男女。
ん?…と、そこへ…。
小さなバスケボールのレプリカを手にして、アリーナの階段を駆け下りる少女がいるぞ?
サインを貰えることに気付いた、うちの娘だ…。
なんや…ミーハーな奴め…。
さっきオフィシャル球の全選手サインボールを、前列席の兄ちゃんに譲ってもらったばかりやのに…
今度は、まだレプリカボールにもサインを描いてもらいたいんかいな…。
それにしても…娘がベンチ裏へ辿りついた頃には、黒山の人だかり。
小学2年の小さな体で…そんなにもみくちゃにされて大丈夫と心配するほどの「押しくら饅頭」状態。
でも、そうしたパワーを出すのも、バイタリティの訓練としては、ま、ええやろ…。
…なんて、傍観していた。
しばらくして、汗を拭いながら、娘がニコニコ階段を駆け上がってきた。
「父ちゃん!なんとか“チョモ”選手と“タケ”選手にサインしてもらったぁ!」
「おう!頑張ったな!」
顔を紅潮させて、続いて娘が聞いてきた。
「父ちゃん!!このボール、せっかく試合前に父ちゃんに買ってもらったボールやねんけどなぁ…?」
うん、試合開始前に、売店で確かに900円で買ってあげたよなぁ…。
「あのな?私、この小さなボールにも選手のサインをもらえたから、さっき私に大きなボールを譲ってくれた前の席のお兄ちゃんに、こっちのボールはプレゼントしたいねん…。でも、私にこの小さなボールを買ってくれた父ちゃんは…怒らへん?」
…お、おまえ!!
自分がサイン欲しかったんやなくて、ボールを譲ってもらった男性へお返しがしたくて、もみくちゃにされながらもベンチ裏にサインをもらいに行っていたのか!?
ぐほっ!
娘からボディーに一発喰らった気分です。
普段は頑固で我がままな娘で、よく胸ぐら掴んでケンカもしますが、今のその娘の気遣いには、父ちゃんTKOです!
「もちろん!エエに決まってるやないかぁ!!前列の兄ちゃんが帰らはる前に、はよ渡しに行って来いっ!!」
…若干なみだ目になっているボクがそこに居たりした。
試合前にオフィシャルボールを譲ってくれた男性も、ビックリしながら喜んでくれていた♪
何かお返しがしたかったという少女の気持ちは伝わったかな?
親の指示ではなく、彼女自らが突発的に行動したこと…。
お返しは900円のレプリカボールとは言え、貴方のために娘が頑張ってサインをもらってきたんですわ…。
そのボール、数時間前までは900円で売られていたものやねんけど、プライスレスな思い出として、是非、持ち帰ってやって下さいまし。
バスケットボールとの出会い、心優しい青年とのやりとり…本当に感謝です。
しかし、こうした小さなミラクルがスタンドでも起きてるって、やっぱりエンターテイメントって、エエね!!
実は、この事がきっかけで、不器用だろうが、身体能力低かろうが…バスケが大好きになった娘は、ミニバスでも必死にバスケをやるようになる。
そして、小学校卒業後もバスケを続ける。
中学2年の時には、大阪代表選手としてジュニアオールスターのコートにも、全国大会の舞台にも立たせて頂いた。
その後も自らいろんな「憧れ」に出会って成長してきたが…一番最初の「感動」は、絶対に忘れないらしい。
「バスケって…めちゃくちゃオモシロイ!!!」…あどけない8歳の女の子を、強烈なバスケ好きにしてくれたエベッサの試合運び、好青年な観客とのやり取り…ミラクルな一日だった。
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彼女は、その後もありがたいご縁で、高校でもインターハイ、国体大阪代表、ウィンターカップを経験。
ホスピタリティを学ぶ決意で進学した大学でも、バスケは続けた。
大学卒業により一度は、一度はバスケを引退したものの、ご縁あって就職配属先の九州では、3×3のチームの契約所属選手となった。
あの日、人の心を動かすプロ選手との出逢いがなければ、間違いなく今の彼女は存在していない。